米国プロサッカーの急成長を支えるのは一発芸? 元日本代表監督の岡田武史氏はFC今治での夢を語る

2018-12-11 11:00 「パ・リーグ インサイト」編集部
今治市で新たな夢を追いかける岡田氏の現在地

 続いて中村氏、岡田氏、PLM代表取締役の根岸友喜氏が登壇して「プロスポーツにおけるセールスの重要性」をテーマに、パネルディスカッションを行った。

 岡田氏が代表を務めるFC今治は今季のJ3昇格を惜しくも逃したが、チームは着実に成長し、強くなるにつれてスポンサーの数も増えた。「昇格できるように頑張って」と声をかけていたサポーターが「今度こそ上がるぞ」と我が事として語るようになった姿に、岡田氏は手ごたえを感じている。

 岡田氏には、今も忘れられない光景がある。現職に就いた2014年、愛媛県今治市で昼下がりにもかかわらず、人もまばらな商店街を目の当たりにした。人口16万人ほどの街では、サッカーの結果だけでスタジアムを満員にできないと悟り、「面白くて強いサッカーをすれば文句は言われない」という指導者としての考えが、「お客様に喜んでもらわなければ駄目」と経営者の視点に切り替わった。現在はクラブの勝敗以上に、サッカーを通じた世の中への貢献に尽力している。

 まずは、クラブとしても個人としても、街とのつながりが深まる方法を模索した。選手、監督時代に培った人脈を生かすだけではない。地元の小中学生を教える指導者と会い、育成コーチとジュニア選手でお年寄りの家を訪ねて困りごとを解決する「孫の手活動」を続け、チームスタッフにも地元の友達を増やす目標を設定した。今でも、今治市を一枚岩にするために足を動かしている。

 そして、岡田氏が注力するのはスタジアムビジネスだ。サッカーの試合を観てもらうだけではなく、試合に負けて悔しい思いをしている人や、サッカーを知らない人が来ても「半日過ごせる場」として楽しめる空間作りを目標にしている。具体的には、本拠地であるありがとうサービス. 夢スタジアムに子供が遊べる場所を作り、フードコートやゲームセンターのほか、駐車場にはステージを設置した。

 近年のプロ野球界を鑑みても、球場のエンターテインメント化は目覚ましい。根岸氏も「プロ野球の球場にはボールパーク化構想があり、海外と比較しても日本の方が進んでいると感じる部分もある。もちろん環境が違うので、それぞれの良さがあるということだと認識しています」と現状について考えを明かした。

 サッカーだけではなく、ありとあらゆるものの魅力を上乗せしている最中、岡田氏のいわば「夢スタジアム構想」に賛同してくれる企業やスポンサーが増えた。「感動、夢、共感、信頼」といった要素を数字で表すことはできないが、中村氏も「目に見えなくても、相手が欲しいと思えるものだと説明できれば、価値のあるものになる」と納得する。

 それゆえ岡田氏は今、スタジアムに新たな絆や心が温まる場面が生まれる仕掛けを増やそうとしている。「試合がなくても憩いの場として人が集まってくる、里山のようなスタジアム」完成が、今治市で追いかけている新しい夢だ。

課題解消だけではなく、球団間のつながりも強化

「プロ野球界には、まだ成長の余地があると思っています」と根岸氏は語る。向上のための方法は様々で、どれを選択するかは各球団の状況や理念などによるが、今回のように体系的に学べる機会はそれほどないのが現状だった。ならば、そうした課題を解消しつつ、球団同士の横連携を深める狙いもあってPBSは発足した。

 終了後、参加者からは「他競技での実際の事例を直接担当していらっしゃる方から、話が聞けることは有意義」や「他球団の方とお話できる機会があり、とても良かった」といった意見を多数、聞くことができた。次回以降に希望する講座内容や講師のリクエストも寄せられている。

「来年はスポーツビジネスに携わりたい参加者を募って実務につながる養成講座を設け、幅広い業界のメソッドを投入しながら、各球団のニーズと合う人材を採用できるようなイベントを開催したいと思っています」とは、根岸が構想する今後のPBSの展望だ。パ・リーグ6球団と共に、PLMとPBSは成長を続ける。